APS-C機のNikon D7000で写真を撮っていた頃、高嶺(高値)の花のフルサイズ機はとても「偉い」存在の様に感じていた。それよりさらに巨大なセンサーを積んだ中判デジ一眼なんて、趣味でやっていいレベルのものではないと思っていた。
しかし、フィルム機にハマってから、フィルムの世界では「フルサイズ」が当たり前だし、中判機も中古で手に届く範囲にある。そして、Twitterなどで目にする中判機の描く世界はとても魅力的で、一時期かなり調べた。調べたが、その時は筐体が大きく重いこと、120フィルムが絶滅寸前であること、現像・スキャンのランニングコストが35mmフィルムよりもかさむことを自分なりの理由にしてその気持ちを押し込めた。
押し込めていたが、リヴィエールで暗室体験をした際に参加者の方から中判カメラたち(マミヤRZ67、ペンタックス67)の話を聞いたり…、素敵な文章が大好きで、いつも更新を楽しみにしている記憶カメラさんのブログにRolleiflex Standardが登場したりして、沸々と中判熱が湧いてきていた。
ある日、大阪の中古カメラ店をめぐっていた時、店頭にRolleicordⅣがあるのを見かけた。気になってしまったのでショーケースから出してもらった。想像していたよりもだいぶん小さく、軽い。有名なRolleiflex3.5Fも見せてもらったが、それに比べるとかなりコンパクトだ。一瞬そのまま連れて帰ろうかと思ったが、踏みとどまった。実はその日はバルナックのレンズを探していたのだ。
結局、レンズも買わずに帰った。…するとRolleicordⅣが気になって仕方ない。サイズをちゃんと測ると、Nikon F6を普段入れている鞄のスペースに余裕で入る…そして軽い。(実測845g)
結局通販で手に入れた。OH済みで、大阪の店頭で見たものより見た目の状態はいいようだ。半年保証もある。
妻が驚いていた。「え、カメラ!?レンズじゃなくて、カメラ買ったの!?」
「人生最後のカメラかも」と言って買ったNikon F6から既に3台…
それを使って今日初めて写真を撮ってきた。万博公園のあじさい祭り。
フィルムを入れるのもおぼつかず、多重露光したり、レンズキャップを閉めたままシャッター切ったりしてしまったが、ひとまず一本撮り終えた。
こんなに「何かがフィルムに写っていてほしい」と祈りながら撮るのは初めて買ったバルナックライカのⅢb以来。
ファインダースクリーンが左右逆像だから構図の決定に戸惑い、時間がかかる。一枚一枚、慎重に撮る。こんな慎重に写真を撮ったのはこれまでの人生で初めてだ。動き回る子供を撮ることはほぼ不可能だと思う。(慣れたらできるのだろうか…)
しかし、このファインダースクリーンというのは素晴らしい。これを見ながら歩き回るだけで別世界を旅している気分になれる。フィルムが切れたとしても、これを眺めていればなんだかそれでいいような、とても魅力的な世界がこの正方形のスクリーンに詰まっている。
現像に出すのがなんだか怖くもワクワクする、というのも久しぶりだ。
どうか、何か写っていますように…!