ここ最近、ハッセルで撮影した画像について、「自宅スキャンですか?」と聞かれることが多く、もしかして中判リバーサルへの関心がじわじわ広がっているのではないか…と(勝手に)思っている。 ということもあって、現状私がどのようにリバーサルのスキャンまでを行っているか、自分自身の記録も兼ねて書いていきたい。 <2020.3 追記あり。>
<撮影・現像>
Hasselblad500C/MもしくはRolleicordⅣで撮影したリバーサルブローニーフィルムを写真屋さんへ現像に出す。わが町の写真屋さんの提携ラボがリバーサルに力を入れており、平日なら中1日で仕上がる。(土日は休み。)
<自宅スキャン>
我が家のスキャナはEPSON GT-X980というもの。
当初、自宅スキャンは35mmネガフィルムをOlympus OM-D EM-1にNikon ES-1を付けてデジタルデュープ(フィルムをデジカメで撮影)していたが、中判(6×6判)を始めるにあたり、それができなくなってしまった。
加えて、デュープしてからのネガの反転作業が思いのほか時間がかかり、やや負担に感じたので、手っ取り早く機械に反転してもらおうという意図もあり、スキャナの導入を決めた。
ただし、中判に対応したフィルムスキャナなど、ほぼ枯れた市場であり、選択肢は極端に少ない。
ほぼEPSONかCanonの二択だ。
用途、精度などを見て、やや値段は張るもののEPSONのGT-X980を選択した。
以下、具体的なスキャニングの手順を見ていく。
1.ホコリとり&フィルムのスキャナへのセット
フラットヘッドスキャナーの最大の難点はホコリだ。これをまずオフィス用ダストブロワーで吹き飛ばす。
まずはスキャナーの読み取り面。上面下面ともブローし、そっと閉じる。
次にフィルム自体も軽くブロー。強く吹くとフィルムを痛めるので慎重に…
(素手でフィルムを持つのは本当はNG…)
フィルムホルダーを、まずは何も置かずにブロー。
フィルムをホルダーにセット。隅がパチンと留まり、フィルムがホルダー読み取り面に押し付けられるように固定される。
このホルダーの精度が悪いと、いくらピントが合った写真でも、スキャナがフィルムを読み取る際にピントが外れてしまう。
GT-X980を選んだ大きな理由の一つはこのホルダーの精度が非常に高いこと。こんなところでストレスを感じていては、間違いなく写欲減退につながるはず…
フィルムをセットしたホルダーを両面ブローした後、スキャナにセットする。
2.スキャン
スキャナ付属のソフト「EPSON Scan」の画面に従ってスキャンしていく。
①今回は解像度低め、1200dpi。2400dpiほどでフルサイズ770万画素相当の解像度だそうだ。
大きくプリントする用途でもなければ、1200dpiでもブログやSNSで見る分には全く問題ない解像度。
②「プレビュー」を押すと、デフォルトでは右画面にサムネイルが現れる。
ただ、せっかくハッセルで撮っているので、Vマークを入れたい…ということで…
③の「通常画面」(前画像)を押すとこのような画面になる。
④画像をドラッグすることでスキャン枠を自由に決めることができる。後ほど編集するので、ここでは大雑把に設定。
⑤一つ作った枠はこのボタンで複製できる。
⑥枠を全部選択して、スキャンする。
⑦今回の設定はアンシャープマスクなし、DIGITAL ICE(ソフト的なホコリ除去機能)あり。現状、これでいい感じにスキャンできている。
3. Lightroomで編集
画質に多少は寄与するかもしれないと思い、スキャンする際はRAW(TIFF)で取り込んでいる。
それをLightroom上で必要な形に編集し、JPEGに変換。
上画像は取り込んだ直後のもの。スキャンの枠が適当な形になっているので、これを整える。
写真の周囲を切り取り…これでほぼ終わり。あとは必要に応じてウォーターマークを入れるくらい。
リバーサルは露出がシビアな分、スキャンデータの編集はほぼしなくてもきれいな写真になっている…というよりも、パラメータを不必要・不自然に触ってしまうと、リバーサルの瑞々しさや透明感、空気感が明らかに失われてしまう。
露出や色味の調整は「微調整」しかできない、というのが本当のところだと思う。
従って、失敗写真(特に露出)の救済は困難であり、失敗を失敗と見せつけられるのがリバーサルなのかなと痛感している…。
写真の周りの黒枠、左側の2つのVマークがハッセルで撮った証。全周に枠を残すのは、不要なトリミングはしていませんよ…という意味で、藤田一咲さんの著作にそのようなことが記されていたため、それを真似たもの。
そして完成したものがこちら。
一枚目が2400dpiでの取り込み(11.0MB)、二枚目が1200dpiでの取り込み画像(2.4MB)。
4.スキャン所要時間
最後にスキャン時の所要時間を紹介して終わりにしたい。
ー1回目ー
プレビュー 約1分
スキャン1200dpi 10分20秒
ー2回目ー
プレビュー 約15秒
スキャン2400dpi 12分30秒
2回目のプレビューはウォームアップおよびスキャン枠の設定が済んでいることから短時間で終了している。
スキャン所要時間はdpiが多くなるほど長くなる。DIGITAL ICEをOFFにするともっと短くなるようだが、この機能がとても優秀なので外していない。
どうだろうか。意外と時間がかかるなぁ…というのが私の印象だが、ながら作業をしながらのんびりスキャンしていくことに最近はすっかり慣れてしまった。
最高で12800dpiまで設定できるようだが、一体どれくらいかかるかわからないので、やったことがない。
2020.3 追記
ここ数か月は上記で紹介したように「ハッセルのVマークを取り込むために画像の枠を設定してスキャン」はせずに、「スキャナが読み取ったサムネイルのままスキャン」している。さらにDigital ICE(スキャナの自動ホコリ補正機能)もOFF。この方がスキャンにかかる時間がかなり短くできる。
所要時間(サムネイルのまま Digital ICE OFF)
スキャン1200dpi 1分55秒
いままで10分以上かかっていたことを考えると、劇的に短くなった。
ちなみにDigital ICE ONの場合は4分17秒かかっていたので、しっかりホコリを落としてDigital ICEに頼らなければ、作業時間はかなり短縮できる。
ホコリ、フラットヘッドスキャナでは付きまとう悩みだが、実はリバーサルフィルムの方が目立たない。Lightroomで一枚当たり数個消す程度で済むことが多い。これがネガだと、かなり多く目立つことがある。というのも、ホコリは基本的に「白い」ので、ネガを反転してポジにした際に「黒く」写りこんで目立つのだ。ネガだと多いときは一枚当たり数十個消すことになる印象。ひどい場合は再度ホコリを取ってスキャンしたりしている。
スキャンにかかる時間が最近はかなり短縮できているので、子供の気が逸れた隙を見て、ぱぱっとスキャンできていたりする(^^
<終わりに>
以上、長くなってしまったが、中判リバーサルのスキャンの一連の流れを見てみた。
もちろん、リバーサルはライトボックス上で、ルーペを覗いて観るのが最高な鑑賞方法ではあるが、このスキャナはその感動にできる限り近づけてくれる、欠かせないパートナー。
マニアックなスキャナで、レビュー記事が非常に少ない機種。
ライトユーザーの下手の横好きでも、操作も編集も思いの他簡単、リバーサルなら「撮って出し」で非常に満足な写真が得られるよ!ということを伝えられればと思う。(感じ方に個人差はあるだろうけど…)
コダックがフィルム再販を開始する等、フィルム界隈は少しにぎやかなものの、さらにリバーサル、中判で撮る人が増えて、GT-X980ユーザーも増えるとうれしいなと思う。
~内容について、間違いや改善点を見つけれた方がおられたら、ご指摘いただけると幸いです。~