カチャン、と小気味のいいシャッター音が響いて、軍艦部の小ぶりなダイヤルがくるりと回転する。
「レンジファインダー」を覗いてピントを合わせ、「ビューファインダー」で画角を決める。露出計は無いので、大体のライトバリューを考え、勘で露出を決めて、撮る。
主に出張先の散歩カメラの相棒として1年以上バルナックライカを使い続けてきたが、これまではカラーもモノクロもすべて「ネガ」フィルムを使い続けてきた。ネガのほうが露出、特にハイキーに寛容なこと、そもそもの露出を勘に頼っていることから、その点にシビアな「ポジ」フィルムはバルナックには不適当だと勝手に思い込んでいた。スマホのアプリで露出は測れるのだが、煩雑なのであまり好きではなく…。
それでもハッセルやローライコードでひたすらポジで撮っているうちに、なんとなくバルナックでもポジで撮ってみようと思い立ち、このほど現像が上がってきた。
こんな感じで、意外とちゃんと何かが写っていて驚いた。バルナック、ポジでも全然いけるなと。とはいえ、謎のミスショット(レンズキャップ取り忘れや救いようのない露出ミス等)で3枚は失っている。
それでも、80年以上前のライカと半世紀以上前のW-Nikkor35mm F2.5 の光学性能、現代のポジフィルム、そして下手の横好きユーザーの勘露出が組み合わさって、こうして曲がりなりにも写真ができることに少し驚いている。
何事も固定観念や先入観は取り払って、「まずはやってみる」ことにちょっと価値がありそうだと、小ぶりなバルナックのボディをしげしげと眺めながら思った。