Leica M9が来て3ヶ月目の印象。デジタルライカとアラサー子連れ父との相性は…

M9が我が家に来て、約3か月。
ちょっと…いや、かなり無理をして購入したこの2009年発売のデジカメ、これがあることで写真生活に大きく変化があったので、その記憶を残しておきたい。

私が初めて触れた「ライカ」はバルナック型、Leica Ⅲbだった。コンパクトでどこへでも連れ出すことができ、その「軍艦部」が「軍艦らしい」姿に魅せられ、続いてブラックペイントのDⅢを手にした。

この次に入手した「ライカ」ボディがM9になる。
バルナックたちの時代から70年と少しのタイムスリップ。

タイムスリップしてみて感じたことはというと…

ファインダーの見え方というか、見方の違いに戸惑う。
バルナック型はピント調節と構図決定をそれぞれ別のファインダーで行うが、M型は同じ一つのファインダーでできる。慣れるまではバルナック型の癖で、「ピントを合わせてからとなりのビューファインダーに目を移し…あれ、ない…」ということを繰り返していたが、今ではそれもなくなった。(そんなことする人、一体どれくらいいるだろうか…。)
このファインダーのキレが悪かったら…このカメラの価値は一体何割減になってしまうのだろう。バルナック型と比較するのは酷な話だが、覗いていて別次元に気持ちのいいファインダーだ。特に、35mmレンズ装着時のブライトフレームの大きさとのバランスが良いかなと思う。

次に、枚数制限が実質無くなったこと。
バルナック型では36枚撮ってはフィルムを変えていたが、32GBのSDカードを挿入したM9の撮影可能枚数はRAW/JPEG同時記録で約700枚。一回の撮影でこれほどの枚数を撮ることが私は無いので、実質無限だ。これは、いいことではある。いいことではある…のだが、撮影することに対する緊張感を欠かせる要因にもなっていると思う。とりあえず撮って、押さえておこうという姿勢は間違いではないと思うが、フィルム機での撮影に比べて、「この瞬間」に懸ける意志を持続すること、撮影前にじっくり考えてから撮る、ということをしなくなってしまいがちだと、個人的には感じている。「あら、いつの間にかこんな枚数撮ってる…でもこれ、要るかな…これも…」といった感じだ。そんなもの、心の持ちようだと言われれば、返す言葉もないが。

そして、Kodak CCDの描写が凄くいいこと。
M9購入前にさんざんM9の情報を求めてはネット上や書店、カメラ店をさまよったが、よく見られたのがこのKodak CCDセンサーの生み出す描写。変態的なカラープロファイル、全く信頼できないオートホワイトバランスと引き換えにしても、確かに、これはいいなという描写にしてくれる。時々ではあるが。あぁ…「いい」と書いてしまうとそれは違うか。「好き」な絵であるということ。

M9購入前、一年ほどフィルム機だけで生活してきたので、ISOを自在に変えられるだけでも途方もない変化。ISO800を超えてくるとさすがにアクの強いノイズが載ってくるが、ISO1000くらいまでなら、そんなに嫌いな感じではない。暗がりでそれなりのシャッタースピード撮れることに少し感動する。
ラティチュードが狭い。つまり、白飛びしやすく黒潰れしやすい。これも普段ハッセルで使っているポジフィルムによく似ている。そういえば、発色や精細感もポジフィルムっぽさが出ているように思う。緻密だけれど、隙がある。人間味のあるカメラだと言えると思う。

最後に取り回し。
デジタルライカの中では軽い。585g。沈胴ズミクロンとフードを含めても880g(自宅のハカリでの実測値…)小さめの肩掛けカバンにM9と財布だけ入れて散歩…なんてことも余裕でできる。

ピークデザイン エブリデイスリング5LにM9&沈胴ズミクロン&フードと財布とElmarit90mmを入れてみた。さらにレンズペン入れて、モバイルバッテリー入れて、Kindle入れて…とやっても、全然OK。これで出先で子供を撮りつつ、お昼寝の間に読書ができる装備となる。(でも、少し長めのお出かけで、オムツとか食事用のエプロンとか、水筒とか持っていくんだったら、リュックのほうがいいな…って何の話だ。)

タイトルのLeicaM9は…に続く言葉として、「とても人間臭いカメラ」だと私は思う。

「カチャン」という小気味のいいシャッター音に続き「ヴィー」とシャッター巻き上げ(のような)音がする。機械を操っている感覚が滲み出す。連写なんてほんの数枚しかできない。しないけど。通常撮影中でも、バッファがすぐいっぱいになって、記録中は「ちょっと…待ってよ」と言わんばかりに赤いLEDランプが点滅する。操作系はものすごくシンプルで、入念に考えられた大きさとクリック感の素晴らしいシャッタースピードダイヤルと、微妙に押しづらいシャッターボタン…

全部が完璧じゃない。さっと構えて、パッと撮れるカメラとは全く対照的だ。まるでマニュアルシフトのクルマのよう。使う人間によって、その性格は変わってくるだろう。

とにかく今は、M9との対話が面白い。彼(彼女?)をもっと理解していきたい。カメラと対話できるのも、こういうマニュアルっぽいデジカメの特権ではないだろうか。

M9も発売から10年経つ。中古価格は徐々に下がってきてはいるが、程度のいいものは相変わらず他社高級機が買えてしまう値段がする。それだけの価値がこのM9にあるのだろうか…。

私はあると思う。人に寄り添う、一緒に景色を眺めてくれるカメラだと思う。いつまでメーカーサポートが得られるかはわからないが、永く同じ時を過ごして、1枚でも多くその記憶を残してくれることを願っている。

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